第16章 誕生日譚~顛末
辿り着いたそこは、最近オープンしたばかりのレストランだった。
開店したばかりなせいか知名度こそまだ低いが、リーズナブルで美味しいとなかなか評判だ。
とはいえ、佐奈はまだ行ったことはなくて、いつか行ってみたいな、と思っていたところへの…この展開……。
「煉、このお店、知ってたの?」
いつの間に、とばかり、席に案内されながら隣の彼を見上げれば、煉は何でもなさそうに頷いた。
「バイト先の先輩に最近教えてもらったんだ。カジュアルOKな店だし、オススメだぞって」
煉のバイト先には、擬人化の他、もちろん普通の人間達も一緒に働いている。
彼らは擬人化に理解があり、一様に親切で、その中の一人が更に続けたかつての台詞を、煉はひっそり思い出していた。
『今度、彼女ができたら連れてってみろよ』
きっと株が上がるぞ、と確か、そう言われた。
でも、まあ。
(これは佐奈には言えないな)
煉が薄く苦笑していると、ふと、佐奈の視線を斜め下から感じる。
何でもないよ、と咄嗟に請け合うと、佐奈は、それなら良いけど…と小首を傾げながら、今度は店の中を遠慮がちに見渡した。
「このお店、人気なのによく席空いてたね…って、あ!」
そこまで言いかけて、もしや、と、佐奈は改めて煉を見上げた。
「もしかして」
前から予約してた?と佐奈が音にする、その前に、投げかけられる問いを見越した煉がくす、と口元を綻ばせる。
「残念。半分不正解かな」
だって、今日二人でここに来る約束をしていたわけじゃなかったのだから、さすがに予約は無理だ。
でも……。
「半分?」
それってどういう意味?と佐奈が眉宇を寄せる。
席へと腰を下ろしながら、煉は頬杖をついた。
「その服を買った時、この店に電話してみたんだ」
それこそダメ元で、二人分の席に空きがあるか訊ねてみた。
そうしたら……。
「丁度キャンセルが出たから、どうぞって」
そう言われたから、空かさず席をリザーブしてもらった、と、煉は事もなげに言った。