第16章 誕生日譚~顛末
運が良い、とも言うが、佐奈的にそれは何というか……。
卒がない、というのか……。
「うーん……」
「? 何唸ってんの?」
渡されたメニューを前に、うっかり(違う意味でなのだが)唸ってしまった佐奈は、慌ててしゃきん、と背筋を伸ばした。
「い、いえ、何でもないです!」
「ぷっ」
「何よ、もうっ」
行ってみたいと思っていたレストランに突然来られたことにもびっくりだが、それ以上に、今日は一日がびっくりだらけだった。
初めは驚いて、とても受け取れないし、受け入れられないと思ったけれど。
今となっては……。
ぱたん、とメニューを閉じ、結局二人揃ってシェフのお勧めコースなるものをオーダーしてから、佐奈は改めて正面の煉を見つめた。
「今日は、ありがとうね。大切にするね」
「え?」
まさかそんな風に言ってもらえると思わなかった煉は、思わず目を瞬いた。
その目前で、佐奈は少しはにかむように笑う。
自分はまだまだだし、その上、近頃ではちょっと不安定な気持ちに、もやもやすることもあるけれど。
ちゃんと彼の役に立てるような先生になりたいと、佐奈は思いを新たにしていた。
「でも今日のは、やり過ぎだから。大体、誕生日っていうのは、普通は煉がプレゼントを貰う側なんだよ?」
『先生』として…ではないが、ちょっと諭すように佐奈が口火を切る、と
「もちろん知ってるよ、そんなこと。でも、こうでもしないと何も受け取ってくれない佐奈も悪いんだからね」
煉はあっさりと、事もなげににっこりと微笑む。
「わ、私のせいなの??」
思わずぎょっとする佐奈に、煉は頬杖をつきながら頷き、佐奈を引き攣らせた。
「うん。我慢のさせ過ぎは良くないよ?」
「が、我慢!?」
「そうだよ?あ、それからプレゼントなら、ちゃんと貰ってるから問題ないよ」
「プレゼントって、何を?」
そんな風に言われても、佐奈には何の自覚もない。