第15章 誕生日譚~前哨
これが煉の望むところだというのなら(どうやらそうらしいし)。
(って言っても、煉の誕生日なのになあ、もう……)
忘れていた自分も悪いし、明日にはちゃんとケーキでお祝いしよう、とは思うものの。
今日は煉の言うままに付き合ってみるのも良いのかもしれない。
そんな佐奈の気持ちの変化を知ってか知らずか、フィッティングは尚も続き、
「ちょ、ちょっと、煉。何やってんの!」
更に別の靴を手にした煉が、いつの間にか目の前に跪くようにしていることに気づいて、佐奈は目を剥いた。
のだが、煉はしれっとして。
「何って、別の靴も試してみた方が良いかと思って」
「じ、自分で履きますっ!」
何だか今日は、煉に押されっぱなしというのか、彼のペースに巻き込まれっぱなしだ。
『こうでもしないと』と言い放ったその言葉通り、その後も煉は佐奈の服(今着ている服に合わせたいらしい)に合う靴を探し、やがて彼の目に適った…そしてちょっと悔しいことに、佐奈も同じく気に入ってしまった靴が決まった、のだが。
佐奈のサイズだけ、欲しい色が在庫切れという事態が判明するや、最後の最後で躓いた、と、煉は髪を掻き揚げた。
元々、その靴には以前から目を着けていたのだが……。
「靴は合わせてみないと分からないと思って、取り置きしてもらってなかったんだ」
服はサイズが分かっていれば大丈夫だろうと、あらかじめ店に取り置きしてもらっていた。
運良く誕生日当日に来られるとは思っていなかったが(佐奈の予定もあるだろうし)、数日中には受け取りに来るからと頼んでおいた。
が、靴は履いてみないと難しそうだ、と考えた煉の判断は正しかったが、反面、希望の色が品切れというというハプニングに見舞われてしまった。
今日は遠慮なく、今まで佐奈に贈りたかった物をプレゼントすると決めていたのだ。
それを、ここで妥協したくない。
すると、考え込む煉に、店員がおずおずと近づいてきた。
「あの、こちらの品でしたら数日中に再入荷の予定がございますので、よろしけれお取り置きいたしましょうか」
それは良い知らせではあったが、しかし、それでは今日はもう手に入らない。