第15章 誕生日譚~前哨
自分の誕生日なのに、他人に贈ろうとするなんて。
(間違ってるし!)
煉の知識が何処かでずれているのか、それともわざとなのか。
いずれにしても、このままなのは……。
「あ、あのね、煉……」
やっぱり…と言いかける声に、しかし煉は振り返らずに声だけで応じた。
「今日は俺の誕生日だからね」
「そ、それは、そうだけど。や、だからね、普通は……」
「じゃあ、プレゼント貰っても良いんだよね」
「え?でも、だって、これじゃ貰ってるのって私の方じゃない!?」
至極ごもっとも。
普通に考えればその通り…なのだが。
「だってこうでもしないと俺にプレゼントさせてくれないし」
「……………」
「だから今日は、俺からのプレゼントの拒否権、佐奈にはないから」
「ちょっ……」
それってどういう誕生日なんだ、と佐奈は思ってしまう。
でも、何考えてんの?と訴える間もなく、ふと立ち止まった煉は、更に違う店…今度は靴(もちろん女性用)に目を向けていた。
「サイズは知ってるけど、靴は実際に履いてみた方が良いよね」
「は?」
困惑しすぎて既に思考回路がショート状態な佐奈をよそに、これまた煉はお目当ての靴(当然、佐奈用)があるようで、既に承知済みのサイズを出してもらうと、佐奈に履いてみるよう勧めてくる。
もうこれ以上は、とか、こんな靴まで受け取れないとか、そんな言葉が佐奈の口を突きかけるが、もはやそんなことは無駄だと、心の中でもう一人の自分が諦めかけていることを感じながら、佐奈はフィッティングスペースのソファに腰を下ろした。
将来の為に貯蓄するよう勧めておきながら、自分の為に彼に散財させてしまうなんて思いきり論外だが、これほど彼が徹底して譲らないというのも珍しい…というより見たことがない。
ということは、彼はそれほどこうしたかったのかな、とも何となく思えてしまう。
でもそれが服を買ってくれたり、靴を買ってくれたり…というのは、佐奈的にはやっぱり釈然とはしないのだが。