第15章 誕生日譚~前哨
何より、自分の方が年数としては経験が多いんだからとか、先生だからとか、いつもはそんなことを言っていたくせに。
(こういう態度って、どうなのさ?)
伏せていたってしっかり分かる真っ赤な頬、覗き見える赤い耳朶と……。
「……………っ」
俯いているせいで、髪が前に流れて露わになる、やはり赤く染まったうなじ……。
しかもそんな彼女が今纏っているのは、煉自身が選んだ服…なんて、この状況を、一体どうしろというのか。
自らセッティングした場とはいえ、この状況を想像していなかった煉は拳を握り、ぐ、と堪えるように奥歯を噛みしめた。
このままだと…駄目だ、と感じる。
何がって…佐奈よりも、煉自身が…色々と。
とにかくこの空気を切り替える必要があると感じていたのは、図らずも煉のみならず佐奈も同様の心持ちだった、が、先に動いたのは果たして…煉、だった。
纏った服を…しかも高い買い物になると分かっているものを、あっさり受け取るわけにもいかず、かといって突き返すのも躊躇われ。
それより何より、着替えた姿で煉の前にいるのが何だか居心地が悪いような、居た堪れないような…恥ずかしい、ような……。
煉と佐奈と、それぞれの抱える逡巡は時間にして僅かの間だったが、まだ半ば固まっている佐奈を横目に、煉はあっさり会計を済ませると、佐奈が着てきた服は袋に詰めてもらうという行動に出た。
試着した服はそのまま着て帰るからと告げれば、先刻の女性店員は慣れた様子でかしこまりましたと頭を垂れる。
着々と事が進む中で、煉がスマホを取り出していると、傍らでは、女性店員が佐奈の纏う服からあっさりとタグを外していく。
途端、佐奈も、はっ、としたように顔を上げ、ここに至って慌てて煉に何かを訴えようとするも、時既に遅し。
「行こうか」
準備万端整って、煉は…本当はひどく躊躇ってどきどきしながら、でもそれを見せないように繕いながら、するり、と佐奈の手を引く。
と、手を引くというより、ほとんど手をつないだ状態で店から連れ出された佐奈は、もう困惑も限界だ。
今日は煉の誕生日だ。
確かにそうだが、でも。
(誕生日って、普通こうじゃないよね!?)