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擬人カレシ~真紅の狼・初めての生徒編~

第15章 誕生日譚~前哨


そうして…自分の選んだ服を今、彼女が纏っている。
どんな風になるだろう、なんて、それなりには(結構色々と)想像したりもしていたが、現実はそれを遙かに超えていた。
目の前の佐奈を見ただけで嬉しくて…眩しいとさえ感じてしまって、上手く表現できない気持ちがいっぱいになって、一言口にするのが精いっぱいだった。
なのに…目の前では佐奈が固まったように俯いてしまっている。

今まで傍にいてくれた店員はといえば、あたかも気を利かせでもするように、微笑みながらあっさり何処かへ行ってしまった。
つまり…店の隅の、ちょっと死角もどきなこの場所に、二人きり……。
これは煉的に想定外…というより、この先の展開はあまり細かく考えていなかった。
何より、佐奈がこんな風に黙り込んでしまうとは思わなかったから。

(これを…どうしろって?)

上手い言動がすぐに見つからず、思わず毒づきたくなる煉だったが、佐奈の髪の隙間から覗く頬と耳朶が真っ赤に色づいているのが見えて、煉は戸惑っていたのも一転、ひっそりと口元が緩んでしまうのを止められなかった。
俯いて、黙ってしまった彼女の気持ちが分からなくて、煉は不安だった。
でも…多分、彼女は怒っていない。
そう感じた。
いきなりの展開に戸惑って、もしかしたら困っているかもしれないけれど。
そういえば、これに似た感じの彼女を最近見たことがあるのを、煉は不意に思い出した。

(そうだ、家で……)

外出先でもないわけではないが、主には家の中で、それは見られる。
その光景を思い返すだけで、煉の頬がつい綻んだ。
自分より背の低い彼女が、上手く手が届かなくて背伸びしていたりするのを可愛いと思いながら、煉としてはそんな彼女を手伝ったり、助けたりするのは至極当然のことだ。
時にはすぐ隣に立って、時には佐奈を後ろから支えるようにしたり。
その時々に起こる日常の出来事に、別に下心はない(つもりだ)けれど。
触れるか触れないかの、彼女との微妙な距離に…ふと手が触れたり、あるいはちょっとバランスを崩した彼女の背中が胸元を掠めたりした時…どうにも騒ぎ出す鼓動を抱えながら、それでも何でもなさそうに振る舞っている自分を、彼女は知らないだろうけど。
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