第2章 共同生活
そして佐奈はそんなある日の、仕事場で。
「知らなかったの?ほら、動物って一年で、人間でいうところの何歳も一気に年を取ったりするでしょ?擬人化するとその辺も人間仕様になるそうだけど」
にこやかに答えてくれる先輩の目で頭を抱えていた。
でも確かにそうだ。
佐奈だって、言われてみれば覚えのあるフレーズだったのに、うっかりしていた。
「じゃあ、煉の場合」
「彼は十分な成体だから、人間年齢にすると確か貴女より幾つか上になるんじゃなかった?」
図体ばかり大きくても、煉は自分より年下なんだからとか、自分の方がお姉さんなんだから…なんて思ってきた自分はそれじゃあ。
(あぁぁぁ~~~)
更に頭を抱えつつ、それでもプライド(?)に賭けて、その夜、佐奈は完璧にカレーを作り上げた。
もちろんルーから手作り…なんてものじゃないのだが。
それでも嬉しそうに食べてくれる姿に何だか満足して…でも。
「先生もやればできるんですね」
にま、と笑う彼は、ちょっと。
「一言多い!もうっ、失敗したのなんて、無理して食べなくたって良いんだからね」
そりゃもちろん、失敗作なんて食べたくない、なんて言われたら、それはそれで凹む自分も見えているが。
でも、何も言わずに無理して食べてもらいたくもない。
だからもう無理しなくて良いし、そんなところで遠慮なんてしなくて良いし、して欲しくないから、と佐奈はこの際とばかりに煉にまくし立てたのに。
「別に、食べられないことなんてなかったですから。無理もしてませんし」
そんなこと一度もなかった、と言われて、佐奈は目を見開いた。
「何言って……」
「本当ですよ」
にこり、とそこで微笑まれて、佐奈は固まりそうになる、と。
「まあ、美味しいに越したことはありませんけどね?」
「っっ!もーっ!」
「先生との食事は楽しくて、好きですよ」
「~~~~~っ」
怒って良いのか、絶句したら良いのか、その夜、佐奈は妙に消耗する自分を自覚したとか…しないとか。
「食事の時だけじゃ、ないんですけどね」
本当はもっと……。
窓越しに音にした煉の囁きは、キッチンで後片付けに勤しむ佐奈の耳には届かない。
「手伝いますよ、先生?」
二人の影がキッチンに並んだのは、それからすぐのこと。