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擬人カレシ~真紅の狼・初めての生徒編~

第14章 それぞれの事情


「ってことは、前回来た時は、まだあの人達はいなかったってことだよね?まだ慣れてないんだよ。そんなに怒らなくても良いんじゃない?」
「佐奈?」
「それにさ。私、別にクレームなんてつけてないよ?スクリーンだって、煉がすぐに下ろしに来てくれたし。だったら何もないのと同じでしょ?」

先刻の煉の、『料金はいただきません』というのが、オーナー不在の中にあって煉が考え付いたクレーム対応の一部…なのだとしたら、クレームをつけていない、そんなつもりもない自分には必要のないものだと、佐奈は改めて言い放つ。
佐奈にしてみれば、見も知らずの女性を特別庇っている意識はなかった。
ただ、まだきっと色々と慣れないだろう擬人化生活。
その上での、慣れないアルバイト。
もしこれが煉だったら…と考えたら、怒る気になんてならなかったのだ。

「煉だって、最初は失敗したでしょ?」
「それは……」

確かにそうだ、と、そこは煉も応じるしかない。
だが、潜む真実が単なるミスじゃないからこそ、煉は頷きたくない。
とてもじゃないが、頷くなんて嫌だった…が。

(佐奈は…知らないんだ)

そして…その必要もない。
あんな二匹のくだらない悪意なんて、知らなくて良い。
そんなことで佐奈を不快にするのも…傷つけるなんて論外だ。
だから……。
煉は仕方なく、そうだね、と頷いて、肩の力を抜いた。

「まあ、二度とこんなこともないだろうし……」

言って、煉はちら、と再び斜め後方を射るように見る。
途端、二匹が跳ね上がったのは、今の意味を理解しているからだろう。

(まあ、してなくても構わないけど……)

それならそれで……。
煉の眼差しに、佐奈には決して向けられることのない、冷たい光が微かに浮かぶ。
やがて瞳を伏せ、煉はいつもの眼差しを佐奈に戻した。

「とにかくさっきのことは、ごめん。クレームの件とかがあったから、ちょっと過敏になってて。かえって嫌な気分にさせちゃったね」

悪かったね、と小さく呟く彼に、佐奈は飲み終えたアイスティをとん、とテーブルに置いて、ふるふる、と首を振った。
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