第14章 それぞれの事情
しまったかも、と自戒しつつ、佐奈は煉の言動について、不思議に思っていたことを口にした。
本人ではない、第三者に問うのもどうか…とも思うが、きっと、というより、煉はこの件についてはちゃんと話してくれない気がしたから。
「何でも話せるようになれたら良いって思っても、なかなかそうはいかないって、お互い分かってはいるんだけどね」
なんて、ジレンマというのか、愚痴めいてしまいそうな自分を戒めるようにして、佐奈はストローを咥えた。
(いけない、いけない。遙くんに愚痴ってどうすんの)
あわあわしつつ、何とか平静を取り戻そうとしている彼女を見て取って、遙は声こそ立てなかったが、快活な笑顔を浮かべた。
それは彼の性格をそのまま映すような…煉とはまた異なる表情だった。
「詳しいことは俺も言えないけど。あいつは佐奈さんを守りたいだけなんだと思うよ」
「え……?」
それはどういう意味…と、しかし佐奈が更に訊く間もあらば。
「いつまで遊んでるのかな?」
「げっ」
遙のすぐ背後…長身な彼のすぐ真後ろに、別の長身がいつの間にか立っている。
ぞわ、と明らかに鳥肌まで立てているらしい彼に、
「は、はるかくん?」
佐奈が呼びかける、その隙に、するり、と間に割り込むように遙の後ろの人物…というより、とうにお見通しな煉が割り込む。
ちろり、と遙を見遣れば、彼は肩を竦め、はいはい、と退散した。
「え…ちょっ、遙くん?ちょっと、煉!」
最後の言葉はもちろん煉へ、まったく何してるんだ、という意図満載で訴えた佐奈に、煉は一瞬、眉を顰めた。
「遙くん…ね」
「え?」
「別に……。けど、あいつとも随分仲良しなんだね、佐奈」
「え?そうかな。だと良いんだけど」
煉の気持ちなど当然知らず、佐奈は遠ざかる遙の背を束の間、見送った。
「煉の同僚だし、同じ擬人化仲間でもあるし。前に、煉と仲良くしてね、って話しかけたら、向こうからも話しかけてくれるようになったんだよ」
「仲良くって……」
そんなことを佐奈が遙に言っていたのは…実はちょっと、聞こえていたりもしたけれど。