第14章 それぞれの事情
確かに、アクセサリーとはいえ、デザインは研究所指定で、自分で勝手にカスタマイズできるわけではないから、少しでも小さい方が良いという気持ちは、佐奈にも理解できる気がした。
取り出したストローでグラスをかき回した拍子に、からん、とアイスティの中の氷が涼しそうな音を立てる。
佐奈が食べ終えた皿をトレーに重ねながら、遙は爽やかに笑った。
「何、急に?『くん』でも『さん』でも俺的にはどっちでもOKだよ。あ、でも『ちゃん』は勘弁」
肩を竦めて見せる辺り、どうやら誰かにそう呼ばれたことがあるらしい。
誰か…というと、一番可能性がありそうなのは……。
「遙くんの先生?」
「ハズレ。どっちかっていうと、佐奈さんの身近かな」
「え?って、あ、煉?」
「正解」
いつもじゃないけど、時々わざと呼ぶんだよね、とぼやく彼は、しかし本気で嫌そうには見えず、そんな煉とのやり取りを楽しんでいるようだった。
「煉と仲良しなんだね」
佐奈にしても彼と初対面の頃には、相手が擬人化とか、そんなことは関係ないからと、遙に敬語で接していたものだが、今ではすっかり互いに砕けた物言いになっている(ちなみに遙の先生とも佐奈は友人だったりする)。
それだけ少しでも打ち解けてくれているとしたら、佐奈としても嬉しいことだ。
このカフェに佐奈が訪れるたび(といってもそう多くはないが)、多忙な時はもちろん別として、余裕のある時には、こうして何かと話しかけてくれるようになった。
「これからも煉と仲良くしてあげてね」
お願いします、と軽く頭を下げると、遙はわたわたとこっちこそ、と反射的に応じてくれた…と。
「まあ、何だかんだでウマが合うみたいだし。あ、けど、さっきの煉のあれ、できたらあんまり怒んないであげて」
「さっき……?」
って何のこと、と問いかけて、遙も煉同様、人間より耳が良いことを思い出し、同時に、それが何を指しているのか察しがついた。
代金はいらないと言った煉に、佐奈が言い返した、ついさっきのあのこと…だろう。
(そ、そんなに怒って見えたかな)