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擬人カレシ~真紅の狼・初めての生徒編~

第14章 それぞれの事情


思えば、まだ一年にも満たない二人での生活だ。
そう簡単に何でも分かるようになれるはずもない。
それは相手が人間だろうと、擬人化だろうと、変わらないのだろう。
なんて、そんなこと、頭では分かっているのだが。
やっぱり、何となく釈然としなくて…けれど口にしたランチは、煉がオススメと言っていただけあって美味しくて。
食材不足で差替えたというフルーツに至っては、よく冷えていて喉越しも優しく、仕事帰りの佐奈を潤してくれた。
と、タイミングを図るようにアイスティが、これまた煉…では今度はなくて。

「お待たせいたしました。食後のアイスティでございます」

流れるような所作を見せたのは……。

「久し振り。佐奈さん」

にこ、と人懐っこく笑む彼に、佐奈は目を見開いた。

「遙(はるか)くん? あ、遙…さん、のが良いのかな」

街のあちこちには、煉以外の擬人化も当然存在している。
そして、同じカフェのバイト仲間で、煉とも仲が良いことから、佐奈自身も顔見知りになった犬の擬人化…それが彼、遙である。

傍目には擬人化と人間との見分けは難しいが、擬人化達は自らの個体識別チップを埋め込んだ、主にアクセサリーに加工したものを常に身に着けることが義務付けられている。
バングルやチョーカー、ネックレスやピアスなど、チップを埋め込む形態の選択は自由だが、擬人化である限り、それが彼らの身体から外されることはない(入浴時等の一時的には例外だが)。

それは擬人研究所による、擬人化の管理体制によるものだ。
そんなことを思いながらそれとなく見遣れば、彼…遙の耳にも研究所のマークが小さく刻まれた黒いピアスが、短く刈られた髪の隙間に見え隠れしている。
ちなみに煉もピアス派で、赤いピアスをしているが(ただ煉は髪が長いので普段は見えない)、同じくピアスを好む擬人化は多いらしい。

ピアスはバングルやチョーカーに比べ、服とのコーディネートがしやすいとか、邪魔にもならない…そしてそれ以上に、他のアクセサリーに比べて小さいそれは、つまりあまり目立たない。
それがピアスを選択する擬人化達にとっては最大の選択理由であるようだ。
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