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擬人カレシ~真紅の狼・初めての生徒編~

第14章 それぞれの事情


佐奈はぱちぱちと目を瞬かせ、口元を綻ばせた。

(これってもしかして、わざとやってるな?)

苦手なものが、そうじゃないものに変わったのだ。
よろしいも何もないのは、煉にはとっくに分かっているだろうに。
でも、まあ、確かに煉はこのカフェの一従業員だ。
対応としては、これが正当…ということなのだろう。
佐奈なりに納得して、彼女は頷いた。

「ありがとう。このままいただきます」
「ありがとうございます。ですが具材の不足はこちらの責任ですので、今回のお代はいただきません」
「はい?」

飛び出した言葉に驚いて、佐奈はフォークを取り落しそうになる。
危うくテーブルから滑り落ちそうになったそれを咄嗟に握れば、同じくフォローしかけていた煉と、再び目が合って。
佐奈は一転、む、と顔を顰めた。

「ちゃんと払います」
「ですが、お客様」

あくまで『客』として遇する言動を用いる彼に、佐奈もまた一人の客として、いつも彼に対するものとは異なる態度を示した。

「具材の変更については先程お詫びいただきましたし、私も了承しました。ですから、通常通りに支払います」

そんな特別待遇なんていらない。
返す言葉につい気持ちが滲んで、佐奈の語気が強くなる。
第一……。

(こんなことされて、私が喜ぶとでも思ってんの!?)

とはいっても、自分を喜ばせるために煉がこんなことをする…というのもちょっと違う気がする……。
でも、現実としてそれは起こっているわけで。
煉はテーブル脇に佇んだまま、微かに瞠目し、誰にも分からない微かな微笑を刻んでから、改めて威儀を正した。

「出過ぎたことを申し上げました」

真っ直ぐに告げた煉は、いっそ潔く頭を下げた。

「では、食後にはストレートティをお持ちいたしますので」

失礼いたしました、と今度は会釈程度に留めて、煉が去っていく。
その背を見送りながら、佐奈はきゅ、とフォークを握る手に力を込めた。
同居生活の中で、煉のことをちょっとは分かってきたかも…と思っても、こういうシーンに遭遇すると、やっぱりまだ分からない、と感じてしまう。
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