第14章 それぞれの事情
すっかり気持ちを切り替えた煉は、完成済み(&ちょっと小細工済み)のランチセットを手に、一路佐奈の元へ向かった。
「お待たせいたしました。Aセットでございます」
こと、とテーブルに乗ったそれに、しかし、
「え?」
佐奈はすぐに気づいた。
(メニューの写真と違う?)
冷製パスタが食べたくて、でもちょっと苦手なものが含まれていたセット…のはずだったのに、肝心の苦手なはずの一品が見当たらない。
本来あるはずのそこには、一口サイズのカットフルーツが綺麗に盛り付けられていた。
「煉?これ……」
内容が違ってる気がするんだけど…と佐奈が訴えるのはお見通しで、煉は恭しく(というよりちょっとわざとらしく)、頭を垂れて見せた。
「申し訳ございません、お客様。一部具材が品切れとなっておりまして、誠に勝手ながら差替えさせていただきました」
「品切れ?」
通常、本当に具材が品切れになった場合には、調理前にその旨を客に伝え、オーダー変更の意思確認等を行う。
そんなセオリーは当然、煉も心得ていたが、わざと何も言わずに(そもそも具材不足なんて嘘だし)、佐奈が好むフルーツをカットして盛り付けた。
今の佐奈は、かつてに比べて大分、煉という存在の性情を知っているし、理解もしている…つもりだ。
ランチセットの中に自分の苦手なものが含まれているのを、きっと煉は気づくだろうことも、何となく佐奈は気づいていた。
だから具材不足を逆手に取って、こんな風にアレンジしてくれたのだろう。
佐奈は、そう解釈してみる。
が、半分が不正解であることを、佐奈は知らない。
そして、その佐奈の解釈を、煉が知ることもない。
具材不足なんて、初めからなかった。
けれどそれを、煉は佐奈に知らせる気などなかったし、その必要もないのだから。
(嘘は良くない、っていうけど……)
見上げてくる佐奈と目が合って、煉は満面の笑みを浮かべた。
(嘘も方便って言葉もあることだしね)
それに一応、悪意のある嘘じゃないし…とは、煉的言い訳かもしれないが。
「まことに申し訳ございません。もしよろしければ、お召し上がりくださいませ」
半分…とはいえ、既に佐奈に見透かされている事実を前に、煉は尚もそう言い募る。