第13章 カフェ騒動
だが、その片割れが佐奈をあの席に案内し、それが故意…というより悪意によるものだったなら、それはある意味、無関心の対象ではなくなる。
それから同調するように騒いでいる、もう一匹も同様だ。
そして…三つ目の、あの声は煉と同じ雄の擬人化で、このカフェでのバイト歴もほぼ同じ。
今では気心の知れた仲間の一人兼友人として、信用していた。
その他大勢向けの丁寧な物言いでなく、言葉を崩して接する程度には……。
そうして、その友人の声が、きゃんきゃんとうるさい二人…もとい、二匹を呆れ気味に一喝しているところへ、煉はわざと姿を現した。
「なるほど。そういうことだったんですね」
壁に寄り掛かり、薄く笑みながら辛辣に言葉を投げた先はもちろん友人ではない。
その向こう…うるさい二匹に対してだ。
察した二匹はびくん、と過剰に跳ね上がる。
気が小さいのか、煉の登場に驚いただけで、二匹の頭からはそれぞれ兎と…そして猫耳がぴょこん、と飛び出してしまった。
「れ、れんさん」
「や、やだな。別に何もしてないのに、煉さんてば怖い顔~」
明らかに怯えている二匹の顔こそが引き攣っていて、煉はといえば、いわゆる怒りの形相など微塵も見せていない。
表面だけなら、いつも通りの微笑を浮かべているくらいだ。
が、それを『怖い』と感じる理由が、この二匹にはあるのだろう。
このまま耳を出した状態で外に出たら、ちょっとした騒動になるかもしれないが、この際、煉にはどうでも良い。
「空席が多い時のお客様のご案内について、あの席は時間帯によって陽射しが強すぎるから注意が必要だと、俺は教えましたよね」
「ぁ……っ」
「ご、ごめんなさ……っ」
涙を浮かべて項垂れる彼女達は明らかに怯えきっている。
この程度で(といっても煉的には…あくまで表面上は理性的かつ穏便に注意してみせただけなのだが)これほど怖がるのなら、初めからくだらない真似などしなければ良いものを……。
小心のくせに、身の程知らずに不快なことをしでかす。
元々群れるのは好きじゃないし、自分にとって重要な存在…あるいは仲間や友人として認識した存在以外とは、必要以上に周囲と仲良くしようなんて気持ちは煉にはあまり(というよりほとんど)なかったが、こういう相手を目の当たりにすると、尚更関わるのが面倒になってくる。
