第13章 カフェ騒動
「何が?」
スクリーンくらい誰でも下ろせるよ、と煉は笑うが、佐奈が言いたいのはそこじゃない。
「そうじゃなくて。全部下ろさないで高さを調節しちゃうとことかがね」
自分だったらきっと無理。
そう苦笑する佐奈に、煉はそうかな、と薄く笑った。
まあ確かに、ここでのバイトも長くなってきたから、こういうちょっとしたところでも、色々と身についたものがあるのは確かかもしれないが。
でもつい気になって、こんな風に動いてしまう理由なんて、煉にすればどうしたって。
(佐奈だから…なんだけどな)
この席は景色は良いけど、陽射しの強い場所だから…と、佐奈の姿を見つけてすぐに動いた理由は実はそれだった、とか。
せっかく来てくれたのに、日焼けなんてさせたら可哀相、とか。
大体、他にも席は空いてるのに、直射日光もどきな席に案内したのは何処のどいつだ(とは実はとっくに分かっているが)なんて憤慨してしまうのだって、全部そう…なのに。
スクリーンのことだって、佐奈は器用だと褒めてくれたが、他の客に対しても陽射しの強い時には仕事柄同様にしていることだから、これについては、まあ確かに慣れ…という部分もあるけれど。
(少しは気づいて欲しいくらいだよ?)
本当に…色々な意味で敵(佐奈)は手強そうだ。
とはいえ、今は仕事中。
煉は気持ちを切り替えるように端末を取り出した。
「ご注文はお決まりですか? お客様」
唐突に店員らしく振る舞う煉に、佐奈は思わず小さく笑ってしまった、と、
「営業用ですから」
なんて声がひっそり返るから、またも笑ってしまいながらも佐奈は、
「じゃあ、Aセットで」
「かしこまりました。お飲み物はいかがなさいますか? こちらからお選びいただけますが」
「アイスティで」
普通…佐奈の経験上の多くは、アイスティを注文すると、続くのはレモンを入れるか、ストレートか、と大抵は確認されるものだったが。
煉は和むように瞳を細めると、少しだけ悪戯っぽく微笑んだ。
「それでは、食後にストレートのアイスティでよろしいでしょうか?」
確信めいた問いかけに、佐奈は束の間目を瞬き、しかしすぐに頬を緩めた。
「はい」
「かしこまりました」
頭を垂れた煉が、メニューを手に背を向ける。