第13章 カフェ騒動
昨夜も戸棚に皿を戻そうと背伸びしていたら、すぐ後ろに彼が現れて。
『ここで良い?』
『あ、うん』
『了解』
真後ろに立ったまま…背中に彼の体温を感じてしまうほどの至近で、煉の手が自分のそれを掠めるようにしながら、ひょい、と、他にも残っていた皿を綺麗に棚にしまってくれて。
『終わったよ。……佐奈?』
すぐ後ろで、ただそう言われただけなのに、それなのに……。
つい、反応が遅れてしまって。
『あ、う、うん! ありがと!』
慌ててその場を飛び退いた昨日の自分は結構挙動不審だったと、我ながら思ったものだ。
(いつからこんなんなっちゃったんだろう?)
はあ、と改めて溜息を吐くのは、そんなことを考えながら歩いていたら、あっさり到着してしまったカフェの一角。
幸か不幸か案内してくれたのは煉ではなかったことに、何だかちょっとほっとしてしまったという、これまた自分的に複雑な気持ちも束の間、佐奈は射し込んでくる強い日差しに眉間を寄せた。
このカフェには何度か来たことがあるが、そういえば、この席に案内されたのは初めてだ。
この店の売りの一つは、窓際の大きなガラスから見渡せる街の風景…なのは知っているが、窓際席はいつも満席で、実際に座れたことはない。
そういう意味では混雑するランチタイムを外して来たのは正解だったのかもしれないが、これはちょっと……。
(この席…すごく眩しい……)
窓際はいつもこんななのだろうか。
それとも、この席だけなのか…時間の問題なのか。
よく分からないが、こんなところに長く座っていたら日焼けもしてしまいそうだ。
ブラインドか何かあれば…と、咄嗟に見上げれば、そこにはロールスクリーンがあるにはあったが、手の届かない高さに巻き上げられていて、佐奈の背ではスクリーンの紐に手が届きそうにない。