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擬人カレシ~真紅の狼・初めての生徒編~

第13章 カフェ騒動


7月に入り、日々の暑さにも拍車の掛かってきた、そんなある日の午後……。

急遽、飛び込んだ業務に追われ、佐奈はその日、休日にも関わらず擬人研究所に詰めていた。
いわゆる休日出勤というやつを余儀なくされた仕事がようやく一段落したのは、とうに正午も過ぎた14時近くのこと。

「お腹すいたーー」

やっと帰れるという段になり、帰途の途中で同僚達と別れながら、佐奈は一瞬、岐路に迷い…結局、ある店へと足を向けた。

「今月はおすすめだよって言ってたしね」

最近はあまり様子を見に行く余裕もなかったし、そういう意味でも、行くには丁度良い。
煉からの誘いもさることながら、『先生』としてはやはり時々は生徒のバイト先の様子を見ておくべきだろう(とは擬人研究所でも言われていることだし)。
とはいえそんな言い訳紛いを、佐奈がわざわざ心のの中で反芻してしまうのは、本当はあまり気が進まないというか、何というのか……。

こつこつこつ……。

進む歩調が微妙に落ちる。
佐奈にしても、行きたくないわけじゃない。

(そうじゃ、ないけど……)

煉との関係…といったら良いのか、上手く言えないが、強いて言うとしたら。

「微妙…なんだよね」

別に喧嘩したわけじゃないし(思ったことを言い合うことはあるが、それが喧嘩に発展することは滅多にない)、不仲になったわけでもない。
むしろそういう意味での関係は良好で、気の置けない友人のような日々を過ごしている…のだが。
ふとした瞬間に巻き起こる自身の変化に、佐奈は戸惑っていた。
つまり、これは自分自身の問題なのだ。

(そうだよ、私がちょっと……)

自意識過剰というか、変というのか、とにかくそれだけで、煉は何も悪くない……。

一緒に歩く時、いつの間にか必ず彼が車道側を歩いてくれているとか。
その上、不意に車が曲がって来ようものなら、人間より気配に敏く、かつ俊敏なその動きでもってすぐさま庇うようにしてくれたり。
歩調だって、普通に歩けば背の高い彼の方が絶対に速いはずなのに、合わせて歩いてくれていたり。
一緒に出かければ、これまた当たり前のように(どんなに大丈夫だと言っても)荷物を持ってくれて。
その他諸々、ドアを開けてくれたり、バスや電車で席が空けば優先して座らせようとしてくれたり……。
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