第12章 願うものは(煉視点)
このままでなんておかないし、いられない。
でも…急ぎすぎないように……。
彼女が警戒しないように、怖がらせて、離れていってしまわないように。
何をどう始めたら良いかはまだ未定で、不透明だらけだけど。
「ねえ、佐奈。今度、俺のバイト先にランチしにおいでよ」
「ランチ?」
「月替わりで何種類かあるんだけど、今月のは結構評判が良いんだよね」
ぜひ来てみて…と誘うのは、生徒としてじゃない自分を見て欲しいから。
こんな風に誘わなくたって、時々バイト先での様子を見に来てくれているのを知ってはいるけれど。
教師として様子を見に来て帰るだけ…なんて、そんなんじゃなくて、ちゃんと自分で彼女を接客したい。
ほんの少しでも、いつもとは違う自分を知って欲しくて。
そんなことで、いきなり何かが変わる…なんて思ってはいないけど。
それでも……。
「そうなんだ? じゃあ、今度行ってみようかな」
彼女が乗り気になってくれたなら、尚更気持ちが入るというものだ。
「是非お越しくださいませ。お嬢様」
「な、なにそれっ!」
驚いてわたわたする彼女に、煉の頬が綻んだ。
先生だけど、もうただの先生じゃない。
生徒だけど…普通の生徒のままじゃ、いられない。
もっと距離を詰めて…近づいて…いつか……。
(ただの生徒だなんて、思えないようにしてあげるから……)