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擬人カレシ~真紅の狼・初めての生徒編~

第12章 願うものは(煉視点)


食事が美味しいという以上に、楽しいと感じるようになったのも、彼女と出会ってからだ。
と、煉の手がふと止まったことに気づいた佐奈が、軽く嗜めるような声を上げた。

「それもちゃんと食べなきゃ駄目だからね」

奇しくも煉の手が止まったそこにあったのは、サラダにトッピングされた、ニンジン。
ニンジン嫌いを知る彼女に指摘された煉は、微かに口元を緩めた。

「じゃあ、食べたらご褒美くれる?」
「え?」

本当は、こんな風に引き換えに強請るような真似をするつもりはなくて。
ただ普通に、タイミングを見て願うつもりだったのだけれど。
偶然…とはいえ、これならこれで良いかもしれない。

「ご、ご褒美って……」

いきなり何?と、目の前で眉間を寄せる彼女が可愛い。
煉は苦手なはずのニンジンをぱくり、と綺麗に口に収めた。
確かに苦手なはずなのに……。

(あれ?)

あまり不味く感じないのは、彼女の効果…だろうか。
それなら、彼女と一緒なら。

(嫌いなものなんて、その内なくなっちゃうかもね)

それはそれで我ながら何て単純か、とも思うものの。
心の中でくすくす笑いながら、やがて綺麗に嚥下した煉は目の前の『先生』におねだりをした。

その内容と結果は…というと……。

「佐奈」
「なぁに?」
「佐奈、佐奈ー。佐奈ちゃん」
「何度も呼ばなくても聞こえてるってば!って『ちゃん』はいらないし!」
「だって呼んでみたいから」
「はぁ…もう……」

『先生』じゃなくて、名前で呼びたい。
そんなご褒美を見事勝ち取った煉は、にこにことご満悦だ。
もっとも、こんなのは、まだまだ始まりでしかない。
彼女が自分を『生徒』としか見ていないなら…見られないというのなら、それを変えてみせる。
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