第11章 眠れない夜(煉視点)
「……………」
わざと寝顔を見ないように。
意識しないように、気にしないように……。
(じゃないと、まずいし……)
色々、自分的に…とぶつぶつ心の中でぼやき続けていれば、結局、一睡もできるわけなんてなくて。
やがて朝日が昇り、何も知らない佐奈が目を覚ます。
「あ、煉」
膝枕という状況に、自分でしたこととはいえ、ちょっと恥ずかしそうにはにかみながら見下ろして、おはよう…と続く、その前に。
「れ、煉!? 耳!?」
「え……?」
目を見開いた至近距離、高い声が響いて煉が怪訝そうに目を眇めた。
「耳が…何?」
一睡もできなかった、とはいえ、何となくうとうとはしていた早朝、一体何事とばかり、次第に覚醒する意識の中、触れてみるまでもなく、煉は自分の変化を自覚した。
「あ………」
耳が…生えている。
擬人化した、人間としての耳ではなく、頭の上に、狼の…それ……。
初めて擬人化したばかりの頃には、驚いた時や、体調を崩した時など、平時と異なる何かの瞬間、思わず耳や尻尾が飛び出してしまうこともあったが。
今ではそんなこともほぼ皆無だし、それに、今朝のこれの理由は、煉には明らかだ。
擬人化でいる為に必要な睡眠時間の不足……。
ほとんで眠れなかったわけだから、理由なんてそれに尽きるわけだが、何も知らない佐奈にすれば、寝てたはずなのに…と軽く混乱しているらしい。
佐奈は心配そうに、半狼化した耳に触れてくる。
「大丈夫?」
言いながら尚も触れてくる彼女に、煉はこそばゆさと、手の感触とに、とく、と胸を鳴らしながら、何でもなさそうな素振りで起き上がった。
「あんまり眠れなかったから、そのせいかも」
本当は、あんまり…なんてもんじゃない。
実は全然、なのだが。
そんなことを言ったら、佐奈が気にしそうだし、誤解もしそうだから。
適当にそんな風に言ってみた、のだが。
「やっぱり、こんな体勢じゃ良くなかったのかな」
佐奈的には、それでもやっぱり気にしてしまったようだ。