第11章 眠れない夜(煉視点)
「明日、一緒に出かけよっかー」
(これは、寝ぼけてる…んだよ、ね?)
煉は、そう思うも。
「うん。そうだね」
とりあえず、律儀に応じてみる、と。
「楽しみだねー。今まで一度も一緒に遊びに行ったこと、なかったもんね、たのし…み……」
にこにこ、とまた笑って、言うだけ言って、佐奈はあっさりと再び眠りの中に落ちていってしまう。
煉はその時になってようやく引っ込めた手で、くしゃ、と自分の前髪を握り締めると、はぁ、とそれは深い息を吐き出した。
我ながら、一人で何を焦っているんだか。
でも、どうしようもない。
こうなってしまう自分は、もうどうにもならないし、まして不快ですらなくて、むしろ……。
(二人で出かける…とか言ってたよね)
今までだって出かけたことくらいあるにはあるが、それはいつも必要に迫られての買い物とか買い物とか買い物とか……。
何度もぐるぐる考えなくても、用向きのはっきりした外出しかなかった。
それが終われば後は帰宅するだけ……。
時々、本当に時々、何度かカフェで休憩したことがあるくらいでの、今考えれば何とももったいない限りの日々。
とはいえ、そんな距離感を自ら作り出してしまったのは、『例の一人目』ゆえに『先生』という存在へのトラウマをなかなか拭えずにいた、半ば自業自得なのだが。
それも己の中で次第に消化し、彼女との距離感も関わりも、いつしか良好なものに変化していたこの頃ではあったものの。
(確かに………)
二人で食材の買い出しとか、そういうことじゃなくて、遊びに行こうか…なんてことは未だにない。
彼女も、そう考えてくれたのだろうか。
だから、あんな風に……?
(まあ、寝ぼけてたみたいだけど)
寝ぼけて、夢現でも、そんな風に思いついて言ってくれたことが何だか嬉しくて、煉は一人、にやついてしまう自分を止められなかった。
別に誰も見ていなくても、それが何だか照れくさくて、片手で顔を覆ってみたりして。
(何…やってんのかな、俺……)
でも、嬉しい。
彼女の膝枕なんて、相変わらず落ち着かなくてどうしようもないけれど、嬉しくて、どきどきして…もう、どうにかなりそうだ。
そんな状況で、とてもじゃないが、眠れるわけがない。
まあ、目の前では何も知らずに、それこそ完全無防備に寝顔を晒している約一名がいたりするのだが。
