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擬人カレシ~真紅の狼・初めての生徒編~

第11章 眠れない夜(煉視点)


擬人研究所のカリキュラムでも、人型となる以上は必要な知識だからと、獣時との相違を含め、なかなか内容の濃い講義だったのを覚えている。
だから…知っていれば尚更に、佐奈に触れたい衝動が疼いた…が。

(駄目だから)

相手は意識がないのに。
何より、彼女はこっちの気持ちなんて、知らないのに。
人間世界では、しばしば人間の男は『狼』に例えられるシーンがあるらしい(これも何かの本で見た)。
どうしてそんなことになっているのか、狼な自分としては不本意この上なかったが、今はちょっと…否定できない気分だ。

「先生……」

起こさない程度の、小さな声で、煉は囁く。

「…佐奈……」

今度、彼女の目の前で『先生』じゃなく、名前で呼んだら、どんな反応をするだろう。
嫌がるだろうか。
それとも…受け入れてくれるだろうか。
思ったことをちゃんと話して欲しい、と彼女は言った。
感情を露わにするのは、実のところ結構苦手だったりするのだが、彼女に見せるのは良いかも…なんて思える、かつてだったら絶対にありえなかったろう、今の自分だから。
だから『これ』も、言葉にしても良いだろうか。

朝になったら……?
それとも、もう少し先の…いつか……?
ああ、でも…と、煉は佐奈から目を反らしながら、ひっそりと息を吐く。
少しだけ、自分は彼女に嘘を吐いた。
こればっかりは、ちょっと…知られたくなくて。
嫌…というよりは告げるには恥ずかしいような、そんな気がして、佐奈との出会いを実は一部脚色した。
佐奈が『先生』になったあの夜が、互いに最初の出会いだった…と、煉は佐奈に語った。
でも…本当はそうじゃない。

(本当は…もっと前から知ってた)

もっと…以前。
自分が擬人研究所に入ったばかりの頃。
それはまだ擬人化もしていない、狼そのままの状態で擬人化になる為の検査だの手順だのを踏んでいた頃のことだった。
敏感に感じる雑多な気配の中には、自分以外の多くの獣と、研究所の人間達のものが入り乱れていた。
最初こそ、そのあまりの雑多加減にやや引き気味になったものだが、それにも慣れてしまえば…それなりに落ち着かなくはあったが、特に意識を引くようなものは何もなくて。
そうして過ごしていた矢先…ふと意識を引かれた気配……。
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