第10章 夜語り
煉としては、どちらの言い回しも自然に操れる…とはいえ、最初の先生だった彼女の前ではもちろんのこと、バイト先でも他の擬人化仲間の前でも、考えてみれば今ではほとんど丁寧語を使っている。
砕けた物言いになるのは、友人の中でも特に親しい極一部…といったところだろうか。
そんなつもりはなかったが、いつの間にかそんな風に使い分けというのか、隔て方をしてしまっていたらしい。
自分でも改めて考えて、初めて気づいた、と煉が嘯くことに、佐奈は、じゃあ、と頷いた。
「これからは、私の前でも普通の喋り方?」
してくれるの?と、小さくなった語尾に、煉は目を見開いた。
無意識とはいえ、今までの煉は心を開いた一部の相手にしか言葉を崩せずにいた。
けれど今夜、既に煉は、これまた無意識に佐奈に対して砕けた物言いを用いている。
本当に無意識に…気づいたら、そうしていた。
佐奈を信じている。
信頼して…この人なら大丈夫だと思った。
気づかない内に、彼女に対して次第に心を開いている自分に気づいた。
そして…それは今夜、信頼も…それとは異なる想いまでも、深度を増して。
だから……。
「うん」
迷いなく、煉が笑顔と共に頷けば。
佐奈も請け合うように頷いた。
「うん。じゃあ、あれだね、これからは思った通りの喋り方とか、態度とか、普通というか…遠慮しないで、って、あ、私は割と今までもそうだったかもだけど」
「ぷっ、そうだね」
「もうっ、そこは笑うとこじゃないから」
こういう感じが良いな、と煉は思った。
こういうやり取りは、他の擬人化達や、バイト先の仲間や、知り合った人間も交わすこともある。
でも、彼女とのそれがやっぱり一番楽しくて、嬉しい。
これを、失くしたくない。
手放したくない。
そう感じた時、煉は初めて、失くしたらどうなるんだろう、という、漠然とした怖さを感じた。
大切であればあるほど、失くすのが怖くなる。
こんなこと…今まではなかったし、知らなかった。
失う怖さ…なんて。