第10章 夜語り
(何か…すごく、可愛い……)
本当は、もう知っている。
分かっている。
警戒して、距離を置きながら、それでもいつの間にか芽生え、自覚してしまった気持ち。
でも…更に再確認、してしまった。
(俺は……)
『先生』だからじゃない。
絶対、そんなんじゃないと断言できる、確信できる。
彼女だから……。
(俺は…この人が、好きだ)
でもそれはきっと、今、この場で言うべきじゃない、とは狼心ながらに思ったから。
「先生は怒ると怖くて、それから、暗いところが苦手。それから……」
三ヶ月で知った彼女のことをわざと並べ立てて、更なる笑みを互いに誘えば、今度は佐奈がそれを遮りながら、私だって…と口を開いた。
「私のこと、甘いもの好きって言うけど、煉だって結構好きだよね。特に前に作ったやつ…あ、そうそう、フレンチトースト」
「正解。じゃ、次の朝食でよろしく」
「え……」
「焦げてないやつで」
「う、うるさ……」
言いかけて、今更…本当に今更だが、佐奈は煉の口調が変化していることに気づいた。
いや、途中から何となく違和感を覚えたりもしていたのだが、色々と頭がぐちゃぐちゃしていて、そこまで気が回らなかった…というのは、言い訳だろうか。
いずれにしろ、はっきりと気づいたそれに、佐奈が不意に言葉を途切らせれば、当然、煉は怪訝になって。
「先生?」
どうかした?と目線で問われて、佐奈は一瞬、うっ、と言葉に詰まった。
(何か、ちょっと今更…だよね……)
でも気づいてしまったし(今更だけど)。
佐奈はおずおずと、ちょっと今更なんだけど…と前置きしながら、上目遣いに煉を見上げた。