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擬人カレシ~真紅の狼・初めての生徒編~

第10章 夜語り


腕の中で、佐奈の頭が頷くのが分かる。
頭だけじゃない。
こうしていると、腕の中にすっぽり収まってしまう彼女はとても小さくて。

(知らなかったな)

これも、今夜初めて知った…と心の中で呟けば、とくとくと、普通と違う音が胸の中で主張する。
この音に、煉は以前から気づいていた。
気づいて…今では、とうに自覚もしている。
まだ、言葉にはしていないけれど。
今はそれよりも、彼女に笑って欲しいから。

「まだちょっとだけど、俺も先生のこと、分かるようになったしね」
「………?」
「そうだなぁ。今夜だけだって、分かったことがあったよ。先生は本気で怒るとすごく怖い。あの人を前にして、すごく冷たい喋り方をしてたよね」

物言いこそ丁寧な言い回しをして、その実、相手を見下すような、突き放すような…ひどく冷めた言動は、怒りに任せて口汚く捲くし立てるよりもいっそ迫力があって、恐ろしく感じる気がする。

ちなみに、あの時その場にいなかったはずの自分がそんなことを知っているのは別に覗き見してたとかじゃなくて(そんな余裕はなかったし)、廊下を走っていたら色々聞こえてきたんだ、と言い訳のように呟く煉が、佐奈には何だかいじらしい(あのやり取りが聞こえたということは、彼女が口走った数々を煉も耳してしまったということだし)と同時に、その仕草がおかしくて。

佐奈が小さく吹き出すようにすると、その気配を察した煉が腕を緩めて佐奈の表情を覗き込んだ、と、そこには、涙の痕が残っていたが、薄っすらと口元が綻んでいて。
煉は目を瞠った。

『泣き笑い』

そんな言葉が煉の脳裏をよぎる。
言葉として知ってはいたが、実際には見たのは初めてで…その上、それが佐奈のもので、しかも。

(近いし……)

自分から抱き寄せてしまったりした結果…なのだが、あまりな至近に煉はくらくらした。
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