第9章 先生
もちろん、そこは狼的…というのか、自身のプライドというのか、男だし…とか、彼女の前で弱音ばかり吐くつもりはないし、それに…今までは意識的にあまり感情をさらけ出さないようにしていた。
でも…今は違う。
いつでも適当に微笑で流すような、そんな自分は終わりにしようと、そう思うから。
彼女の…前では……。
「俺も話すし、ちゃんと(自分を)見せるから。だから先生も、話して?」
自分を知って欲しい…それ以上に、彼女を知りたいと思う。
そんな心地は、煉には初めてだった。
だから戸惑いもあるけれど。
同時に、迷わないと…煉は決めた、と。
「……愚痴だらけかもよ?」
そんな答えが返って、煉は微笑んだ。
今までの…意味なく適当に笑って見せるそれではなくて、本当に、何だか自然に浮かんでしまう笑顔で。
「それでも良いよ。だから」
「?」
「俺…これからも先生の生徒でいて、良い?」
「な…に、言ってんの、当たり前でしょ!」
いきなり何を言い出すんだ、と佐奈は一気に目を吊り上げた。
「もう、急に何を……っ」
言い出すかと思えば…と続くはずだった佐奈に、
「うん。ありがと、先生」
煉は嬉しそうに目を細めると、玄関でそうしたように、こつん、と佐奈の肩に額を乗せ、やはりこれまた玄関での再現さながら、佐奈はそんな彼の頭を撫でながら遠い目をした。