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擬人カレシ~真紅の狼・初めての生徒編~

第9章 先生


そのフレーズに、佐奈は確かに覚えがあった。
当初、気を張り詰めているような…こちらとの距離を取りかねて躊躇しているような、そんな気配を纏っていた煉に、それは確かに、いつか佐奈自身が口にした言葉だ。
生徒だから、あれは駄目これは駄目…なんてそんなことはないと、そう言った記憶もある。

もちろん擬人化として生活する以上、守らなければならないルールに則るのは大原則だけれど、それ以外は、自身の意思や気持ちを押し込めることなんてないんだから、煉らしくいれば良いと…確かに……。

(言った…かも……)

『一人目の先生』のことを知った今では、自分と会ったばかりの煉が、ひどく警戒して、なかなか気を許してくれず、距離を取ろうとしていた理由が分かる。

でも初めて会ったあの頃は何も知らなかったから、彼の心を少しでも解きほぐしたくて、先生になったばかりの自分もまた、何をどうしてあげたら良いのかも分からなくて。
そのせいなのか、お陰なのか、今ではこんな状態だが(まあ、良いことなのだろうけど)。
先生の威厳もへったくれもあったもんじゃない。

(ま、私が威厳…とか、最初から無理な話なんだけどさ)

半ば自虐的心境でいると、煉は佐奈の目を見ながら続けた。

「相手がいた方が、喋り甲斐もあるでしょ」
「そういう問題じゃ……」
「いっぱい話してよ」
「れ……」

煉…と、佐奈は彼の言葉を止めようとする。
そうでないと何だか、そういうのもありかも…なんて本当に思ってしまいそうで。
でもこんな問答をしていると、どっちが先生でどっちが生徒なのか、何だか分からなくなってきそうだ。
なのに。

「俺も今日、たくさん話した。これからはもっと、ちゃんと先生に話すから」

無理じゃなくて、話したいし、聞いてほしいから。
そう言われて、佐奈は目を見開く。

「これから?」
「うん」

問うようにされて、煉は躊躇いなく頷いた。
煉にしても、本当のところを言えば、バイト先とか研究所に通っての勉強についてとか、相談したり、聞いて欲しかったり…なんてことも、実はあったりするもので。
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