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擬人カレシ~真紅の狼・初めての生徒編~

第9章 先生


「まずは研究所の寮に入ろうってことになって、そこに向かおうとして…その先は、先生も知ってる通りだよ」
「え…でも……?」

一瞬納得しそうになった佐奈だったが、しかし、シオンの前で、彼は擬人化して(服も借りたそうだし)、話をして、当面は再び研究所内の寮に入ることになった、とそう言っていたのに。

「私と会った時は狼だった」

シオンと会った直後の、そのままの姿なら擬人化しているはずなのに。
あの夜、残業していた佐奈の目の前に現れたのは、燃え盛るような、真っ赤な体躯と…瞳……。
初めて見た時には、そのあまりの突然さに、驚き以上の恐怖に身が竦んだ自分を、佐奈は今もはっきりと覚えている。
辻褄が合わなくない?と、煉の隣に座り直した佐奈がねめつけると、彼は素知らぬ顔で窓の外を見た。

「そんなことないよ。ただ、もう一度獣化しただけだし」
「どうして?」

佐奈には、そこが分からなかった。
擬人化していたものを、わざわざもう一度獣化するなんて。
擬人化と獣化と、その双方を自分の意のままにできることが彼らの能力の一つだとは理解しているが、だからと言って時を置かずに変化を繰り返すことは控えるよう、研究所でのカリキュラムでも教育されているはずだ。
それを敢えて行うなんて……。
再び獣化する理由なんて、もう何処にもなかったはずなのに。
納得できそうにない佐奈を前に、煉は髪を掻き揚げた。

「どうしてって言われても。何となくというか…あの人が追いかけてくるかもとか、色々考えてたら、何となく走り出しちゃってただけだよ」

人間的に言うと、情緒不安定ってやつ?
なんて言われても、佐奈的には釈然としない。
しないのだが……。
本人がそうだと言い切る以上、それを嘘だと言い返す確証も佐奈にはなかった。

「本当に?」

でも何か重要なことを、彼がまだ独りで抱えているような気もして、それだけはして欲しくなくて、佐奈は眉間を寄せた。
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