第8章 追想
「あの人は俺のレベルを自慢してたらしいし、実際、レベルアップした時だけ、あの人は俺のことを頭が良いとか何とか褒めたけど、まるで嬉しくなかったね。俺は別に特別頭が良かったわけじゃなくて、自分の為に勉強漬けになってただけなのに。あの人には最後まで何も伝わってなかったんだろうな。まあ、俺もあの頃にはもう、どうにかしようとか、そんな気持ちなんてなかったからお互い様だけど。それに褒めてくれたって言ってもその場限りだったし、あの人自身が俺に何かを教えてくれたことなんてほとんどなかったよ。外に出て自分の恥になると困るからとか、そういう意味で無理矢理教え込まれたことはあるけど、それだけかな」
ちょっと愚痴みたいになっちゃってごめんね、と自嘲しながら、他の実践は全て、バイト先での他者との関わりによって培ったものだと、煉は嘯いた。
「今もだけど、あの人のところにいた時も、カフェでバイトしたことあったんだけど、接客業って色々勉強になるんだよね」
多くの相手と関わったりするのは本来、煉としては苦手分野だったが、それでも…と煉は言う。
「ほら、俺って人見知りだから。でも…それでも、あの人に教えてもらうよりは…っていうより、そもそも教えてなんてもらえなかったけど、とにかく、バイトで色々吸収する方が、俺にはずっと有意義だったし、気も紛れたよ」
苦く笑って、最後にくしゃり、と自分の前髪を握り締める煉を、佐奈は堪らなくなって抱きしめた。