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擬人カレシ~真紅の狼・初めての生徒編~

第8章 追想


「どんなのが優秀な先生っていうのかなんて、俺は知らない。けど、俺にはあの人は無理だった」
「無理?」

煉は頷いて、宙を眺めた。

「何て言うのかな、その後に勘も戻って、すぐに感じたのは『合わない』ってことだった。人間でいうと…フィーリングとか、相性とか、そういうやつ?とにかく、ああ失敗したかもなって思ったけど、生徒になった以上、もうどうしようもないとも思ったよ。だからどうにか上手くやってこうって、俺なりに努力もした。でも駄目だった」

一人目の先生だった彼女について語る煉は、佐奈にはひどく辛そうで、それ以上に自嘲的に見えた。

「ウマが合わないとか、そういうのは人間同士でもよくあることだよ」

だから煉が悪いとか、そういうわけじゃないよ、と、励ますとか慰めるとか、そういうわけでなく、佐奈は咄嗟に思ったままを口にした、と、煉は少しだけ瞳を和ませた。

「うん、そうだと思う。今はそういうのもあったんだろうなって、思えるよ。けど、あの頃は本当に駄目だったんだ。どうにか上手くやろうと思っても、こっちが苦手意識持ってると相手にも通じちゃうっていうことなのかな。あの人も俺のことが気に入らなかったんだろうと思うけど、段々邪険にされるようになって。そうじゃなくても、あの人のところには俺より前から別の擬人化がいて、そっちはえらくお気に入りみたいだったから」

もう扱いの差が凄いの何の…と、彼は薄く笑った。
まるで、もう笑うしかないとでも言うような様に、佐奈は顔を顰める。
さっきからずっと、煉は一人目の先生であった彼女を『あの人』としか呼ばない。
一度として、彼女を指して『先生』とは口にしない、それだけのものが、煉の中にあるのだと思うと、佐奈は知らず、ぎゅ、と唇を噛みしめていた。

そんな佐奈の傍らでは、それでも煉が尚も薄く笑っている。
それが佐奈にはかえって辛かったが、今はただ、黙って耳を傾けようと沈黙を守った。

「それでも最初は、俺もあの人も、どっちが何をしたとか、そういうことは何もなかったし、それなりに普通な毎日だったんだ」

けれど、何となく互いが互いを自分とは合わないと感じた、そのせいなのかは、もはや煉にも分からないが、そんな日々が続いたある頃から、次第に変化が現れ始めた。
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