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擬人カレシ~真紅の狼・初めての生徒編~

第8章 追想


もちろん、擬人化全てが同じ結論に行き着くとは限らないのだろうけれど。
でも、もしかしたら。

「煉も……?」

そう問うだけで、今の煉には佐奈の訊ねる意図が見えて、苦笑いしながら首を傾げた。

「どうだろう? そんなつもりはなかった…というか、あの時の俺は、実はまだ完全に勘が戻ってなかったんだ。でも俺の周りには、俺と同じ状況の仲間はいなかったし、それを誰かに知られるのも何となく嫌だったというか……」

本来、獣…特に現在擬人化可能な種の中にあって、野生の勘を最も強く有しているといわれる狼の勘は非常に鋭い。
耳や鼻、気配を察することに長けているだけでなく、目にした相手を判別する…端的に言うなら自身にとって敵か味方か、あるいは害となるか否か、人間的にいうなら相性的なものすら、時に感じ取ることができた。

だが面接の時点で、煉の勘は著しく欠落したままだった。
もしもあの時、勘の全てが戻っていたなら、自分は違う答えを出していたかもしれないと、煉は自嘲する。

「会った時、それでも違和感みたいな、あれ?って感じがあったのは、今も覚えてるよ。でもあの時の俺は勘が鈍ってる自覚があったし、多分、そんなつもりはなかったけど、やっぱり俺も、心の何処かで先生を得ることに焦っていたのかもしれない」

目の前の先生候補が、自分と相容れるか否か、勘が戻っていたなら恐らくはその場で察知できたに違いないが、当時はそれも半ば役に立たず。
その上この機会を逃せば、次はいつ、自分が先生候補との面接に巡り合わせることができるかも分からなかったから。

「今考えれば、それでも俺はあの時、断るべきだったのかもしれない」

でもあの時の自分は、目の前の先生候補を自らの教師として受け入れ、その生徒となる道を選択したのだと、煉は再び過去を振り返る。

先生を持たない擬人化は研究所の外へ出ることを禁じられているが、これで外へ出られる。
これでもっと広い世界を見ることができる。
人間に近づけるのだと、先へと広がるものに希望を抱いて。
外への憧ればかりが先行した、身体は成体でも、人間としての知識も経験も浅すぎた煉はしかし、それからすぐに後悔した。

「早まった、って気づいたのは、それからすぐだった」

苦々しく吐き出す煉の脳裏には、かつての『先生』の姿が映った。
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