• テキストサイズ

擬人カレシ~真紅の狼・初めての生徒編~

第8章 追想


「それが…あの人?」

そこで初めて、佐奈が言葉を口にする。
煉は、うん、と頷いた。

「『先生』の数って、少ないらしいんだよね」

不意に、煉はそんなことを口にしながら、佐奈を見た。
薄闇の室内。
でも、すぐ隣に座る煉の赤い目は、佐奈にもしっかりと見て取れて、一瞬どき、としてしまうのに不思議と反らすこともできなくて、佐奈は頷くことで肯定した。

そう…擬人化達の『先生』となる人材は、現在不足している。
擬人化の数に対し、『先生』の数が少ないという現実がそこにあった。
かと言って、誰も彼もを無差別に『先生』にするわけにはいかない。
『先生』になるには、その為のカリキュラムがあり、その後、資格を得る為の試験がある。
佐奈もそうした手順を踏んだ上で資格を得、今があった。
そんな佐奈を見つめて、煉は目を伏せた。

「面接しても、何となく合わなそうとか、色々な理由で、擬人化にも先生候補にも、どっちにも拒否権がある。けど、俺達擬人化が先生候補を断ることはほとんどない」
「え?」

それは、佐奈には初耳だった。
面接におけるマッチング確率までは開示されていないからだが、それにしても擬人化側からの拒否がほとんどない…とは……。
その理由が分からない、と、思い切り表情に出ていたらしい佐奈の様子に、煉は苦笑した。

「『先生』が少ないってことは、擬人化が先生を得られる機会が少ないってことだから」
「……………」

そう言われて佐奈は納得し、同時に瞠目した後で、項垂れた。
擬人化しても、先生の数が少ない為に、彼らは自分の先生を得る機会になかなか恵まれない。
煉が言ったのは、つまりそういうことだ。

極論してしまえば、そんな状況の中でようやく巡り合わせた、先生を得られるかもしれないという面接の機会を前にした時、擬人化達は…もしかしたら、何処かで納得できないものを感じたとしても、目の前の相手を己の先生として受け入れる道を選んでしまうのではないか。
/ 179ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp