第7章 月明かり
「先生?」
「今日は二人で夜更かしだね」
言って、佐奈は笑顔を作る。
月明かりだけの暗がり……。
佐奈の目に、煉の表情は仄かに見える程度だったが、本来狼で、人間より夜目の利く煉には、彼女が薄く微笑んでいるのがはっきりと見えた。
笑顔で…夜更かしだね、と、そう、確かに言ってくれた。
それが彼女の答えなのだと煉は直感し、自然と笑みを零した。
「たまには、良いんじゃないかな」
ついさっき佐奈が使った言い回しを、今度は煉が真似る。
佐奈もそうだね、と頷いて。
「あ、電気つけよっか」
立ち上がろうと、したけれど。
「このままが、良い」
煉がこのままの空間を望んだから、佐奈は薄闇の中で再び腰を下ろし、煉もまた、その隣へと座り込んで。
「あの人に会ったのは、半年前の面接が初めてだった」
そう切り出して、煉は遠い目で過去を紡ぎ始めた。