第7章 月明かり
眠る為のパジャマ姿ではなく、さっきまでと変わらない服装のまま座り込んでいる佐奈を、(もちろん今は服を着ている)彼が静かに見下ろしてくる。
「れ………」
驚いて見上げる佐奈に、煉は、ぐ、と拳を握る。
バツが悪そうに目を伏せながらも、すぐにその視線を佐奈に据えて眉間を寄せた。
「俺にはおやすみとか言っといて、先生は寝ないんですか」
「え…ああ、これは、その……」
もごもごと言い訳を探す佐奈に、しかし煉はいつになく容赦なかった。
「着替えてもないし」
「……………」
矢継ぎ早に指摘されて、佐奈は返す言葉に詰まる。
「えっと、その、何となく。ね、眠くないっていうか、ちょっとぼーっとしたくてさ」
「こんな暗いとこで?」
「た、たまには……」
「先生、暗いとこ苦手でしたよね」
図星をさされて、佐奈はさらに答えに窮した。
どうして自分はこんなところで彼にやり込められているんだろうか…なんて、そんなことを考える余裕もない。
どうにもこうにも分の悪い中、佐奈はわざと笑いながら手を振った。
「まあ良いじゃない。たまにはそういう気分の時もあるんだってば」
だから気にしないでよ、とは言うものの、このままでは、どうやら事態は動きそうにない。
とても眠れそうになかったが、佐奈はとりあえずこの場を引き上げようと立ち上がりかけた…と、
「先生」
呼ぶ…というよりは痛烈に訴えるような声音が、佐奈の動きを止める。
そのまま固まっていると、僅かに離れていた距離を更に縮めるようにして、煉は佐奈の目の前に片膝をついた。
「聞いて欲しいんだ。先生に……」
「煉……?」
無理に話さなくても良い。
今じゃなくても良いんだよ、と佐奈は煉に告げた。
知りたいか、と言われれば、佐奈的にはやはり知りたいとは思ってしまう。
でもそれを無理に煉に求めようとは思わないし、してはいけないとも思ったから。
「煉…今日じゃなくても……」
今日の今日で…なんて、煉には辛いだろうと、佐奈には思えて。
だから、と、佐奈が告げることに、煉は首を振った。