第7章 月明かり
煉が擬人化を保っていられる時間には、まだ余裕がある。
でも、もう休ませてあげなければ。
少なくとも、佐奈はそう思った。
同じ人間同士の友達とか仲間とか、彼とはそういう関係とは違う。
彼は…生徒なのだから。
先生として、ちゃんと考えてあげなきゃいけない。
自分の心のもやもやなんて、そんなものは二の次だ。
(私は、先生なんだから)
自分の使命を改めて思い返すようにして、佐奈はぽつり、と呟いた。
「おやすみ、煉」
疲れているだろう彼を思って、佐奈は彼の部屋の傍を離れる。
ドアのすぐ向こうで微かに物音が聞こえた気がしたが、佐奈は振り返らなかった。
その足で…とりあえずシャワーとか着替えとか…と考えて進もうとするのだが。
「はぁ……」
佐奈が行き着いたのは、リビングの片隅。
ぺたり、とへたり込むように座り込んで、窓ガラスに寄り掛かる。
灯りは結局つけないまま、射し込んでくる淡い月の光の中、ぼんやりとした薄闇を何となしに眺めて。
どれくらいそうしていただろう。
それほど経っていない気もするし、時間の感覚も分からないような、そんなこともどうでも良くなってきたような、そんな頃、
「こんなとこで、何してるんですか」
足音もなく、煉が目の前に現れた。