第7章 月明かり
「煉のせいじゃない。煉は、何も悪くないよ」
やっぱり、上手く言えない。
でも、それでも言葉を紡ぎながら、ぎゅ、と佐奈が両腕に力を込めれば、煉の身体がびくり、と震えるのが伝わってくる。
本当だったら、裸の相手にこんなこと…なんてありえないし、できっこない。
でも伝えたくて。
言葉だけじゃない、何かを伝えたくて。
無意識に…気づいた時には、佐奈の身体はそんな風に動いていた。
そんな、擬人化した彼よりずっと小さな体躯を受け止めた煉にすれば、驚き、戸惑うばかりで…でも、嬉しさも、感じて。
けれど…やっぱり。
「けど俺がいなかったら、先生はあんな目に遭わなかった」
切なげに響く声に、今度は佐奈がぴくりと反応する。
刹那、緩んだ彼女の腕をそっと解いて、煉は足早に脇をすり抜けた。
「俺、着替えてきます」
二人目の、先生……。
今度こそ大丈夫だと、先生だと思えるようになった彼女……。
そして…自分にとってはそれ以上に……。
煉にとっては、そう想うようにさえなった、相手だけれど。
でも今夜のことで、こんな面倒な生徒なんて、彼女は嫌気が差してしまったかもしれない。
『煉のせいじゃないよ』
そう言われた時、煉は、何だか泣きそうな自分に気づいた。
失くしたくない。
この場所…何より、彼女を……。
だけど…だから……。
今までのことを、ちゃんと話さなければ。
足早に進めば、立ち尽くした佐奈の姿が、普通の人間よりも夜目の利く煉の視界を掠める。
佐奈は、そんな煉を呼び止めたい気持ちになって…でもできないまま。
やがて、ぱたん、と彼の部屋のドアが閉じる音に、佐奈は、はっ、と身じろいだ。