第6章 夜の顛末
それがまあ、シオンが言うところの、
「なるほど『抜け殻』か」
上手いことを言う…じゃなくて。
「もう、変身禁止だからね!」
なんて、何でもない時なら、そんなことも言いたいところだったかもしれないが。
早口に捲くし立てた、そのすぐ後で、佐奈は嘘だよ、と笑って見せた。
「あんまりしょっちゅう破かれたら確かに困るけど、でも今日は…嬉しかった」
まさか来てくれるなんて思わなかった。
まさか…あんな風に守ろうとしてくれるなんて、思わなかったから。
ありがとうね、と、再び礼を口にした佐奈はその後、煉の抜け殻をしっかり回収…は果たせなかったけれど(一部は誰かに拾われたか、掃除されたものか、既に影も形もなくなっていた)。
いわゆる貴重品を入れたバッグだけは狼化した煉の首に下がっているから(この辺りは佐奈がしつこく教育した結果らしい)、まあ、良し…だろうか。
それより何より、今日は嫌な思いもして、つらい気持ちにもなった日だったが、今は、胸が温かい気がするから。
「じゃあ、せっかくだし家まで競争…って、何、その呆れたような目は?」
唐突(?)な佐奈の提案に、狼の目が胡乱に据わっていた。
狼と人間。
競走の結果なんて、考えるまでもない。
だから煉の視線の意味だって、ちゃんと佐奈にも分かっていたが…いや、分かるからこそ。
「あ、煉、あそこに服が落ちてるよ!」
煉のじゃない?と指させば、
「?」
示された道の隅に煉の目が向いた、その隙に。
「隙あり!」
だだだっ、と佐奈がフライングで走り出した…までは良かったが、その程度のハンデなど意味があるわけもなく。
ぜいぜいと肩で息をする佐奈の横を煉はあっさりと抜き去りつつ、しかし、佐奈が追い付いてくるのを待って、また少しだけ先へと走り出す。
それは暗い夜道を彼女一人にしない為…なのかどうかは、佐奈は知らない。
でも、佐奈も煉も、ひどく楽しげに駆けっこに興じた、それは深夜の帰り道…だった。