第6章 夜の顛末
やけにきっぱりと言い放つシオンの自信は何処から来ているのか。
何故か分からないが、この時、佐奈は頷くしかなくて。
それを満足げに見つめるシオンは、ふと時計を見遣り、佐奈(と煉)に帰宅を促した。
確かに、もう遅い時間だ。
素直に立ち上がる佐奈と煉に、ふと、そうだった、と思い出したようにシオンが声を掛けた。
「今夜はご迷惑をお掛けしたことですし、明日は一日休養してください。貴女の上司には、私からちゃんと話しておきますから」
だから何も気にせずに…と送り出してくれる様は優しくて、出来る上司…に見えるし、実際頼もしく思う…が。
「何かさっき…ちょっと怖いような感じ、しなかった?」
ペナルティについて語る彼は、何だか……。
部屋を出つつ、ちょっと腰を屈めながら、ひそり、と佐奈が狼姿の煉に耳打ちすれば、赤い耳がぴくぴくと動いて佐奈を仰いでくる。
だがしかし、そのまま一人と一頭の目が合う…瞬間、
「ああ、そうでした」
ぽん、と手を打つ音が背後に聞こえて、佐奈は思わずしゃきん、と背筋を伸ばした。
「は、はい!」
直立不動な背に掛かったのは、しかし、シオンの軽い口調だった。
「帰り道で、ちゃんと抜け殻は回収していってくださいね。まあ、既になくなっていれば仕方ありませんが」
「抜け殻?」
とは一体?と佐奈は小首を傾げかけ、
「あ!」
すぐに悟って、了解しました、と頭を垂れて、佐奈は煉と共に今度こそ室外に出た。
擬人化が獣化する時、それまで身に着けていた人間の服は脱ぎ滑らせ…あるいは獣化の衝撃によって破れ、いずれにしても、獣化した体躯には服を纏うことはない。
つまりは、今こうして狼と化している煉もまた、獣化の際に何処かの道端で纏っていたはずの服を脱ぎ散らかし、もしくは裂けた布をばらまいてきているわけだ。