第6章 夜の顛末
しかし、それと今夜のことと、どんな関係があるというのか。
そんな疑問は、すぐに佐奈の表情に出ていたらしい。
シオンはくすくす笑いながら、目の前のソファを佐奈に示す。
と、その意図を察して、失礼します、と小声で呟きながら、おずおずと腰を下ろす佐奈を見つめて、シオンは相好を崩した。
「貴女は、分かりやすい人ですね」
くすくす、と零れる笑みに嫌味は感じない。
つい今しがた、別の人物に同じような台詞を言われたが、それを口にする人物…言い方、雰囲気が異なるだけで、こうも違って聞こえるものらしい。
何やら新たな発見(?)をしたような気分の佐奈が腰を落ち着けると、たたた、とこれまた赤い狼が小走りで寄り添う姿が、またしてもシオンの微笑を誘いかけたが、今度は軽く咳払いをするに留めて、彼は先を続けた。
「研究所の中で1、2を誇るセキュリティレベルの室内で起きたことです。逐一記録されているのは当然ですからね」
「あっ」
そこまで言われて、佐奈もシオンの言わんとしていることを悟った。
つまりは、彼女との一連のやり取りは全て記録されていて、だから今回の顛末が、いずれの非であるかも明らかである、と、この上司はそう言ってくれている…らしい。
だからこそ、最初に『お咎めなし』と言ってくれたのかもしれない。
いずれにしろ、自分も…それ以上に、煉もお咎めなしなことが、佐奈には素直に嬉しいことだった。
お蔭でようやく肩の力の抜けた佐奈だったが、しかし同時に、腑に落ちないこともあって。
それを払拭すべく、佐奈は知らずにいたこれまで…今まで知らされなかった、ちゃんと気づくことのできなかったことを、シオンに訊ねた。
教えてくれるかどうか、そんな保証はなかったが、訊いてみなければ始まらない。
そうして答えを求めた佐奈に、シオンは腕を組み、一つ…息を吐いた。
今は狼と化している煉に視線を送る…と、彼はふん、と鼻を鳴らしながら佐奈の足元に伏せる仕草を見せる。
それを、彼の過去を語ることへの『了承』と受け止めたシオンは、それでは…と口火を切ったのだった。
佐奈はこの夜、煉の過去の一部…『一人目の先生』に関するかつてを知ることとなった。