• テキストサイズ

擬人カレシ~真紅の狼・初めての生徒編~

第6章 夜の顛末


散々というのか色々というのか、予想外の展開に見舞われた佐奈と煉は、そのままとりあえず家に帰るはず…だったのだが。

二人…もとい、現在進行上、一人と一頭の姿は今、研究所内にあるシオンの事務室の中にあった。
どうしてこんな時間に彼がいるのかなんて知る術もないまま、所在なく佇む佐奈の足元には、真紅の狼が隙なくシオンの様子を窺っている。
と、ややして、燃え盛るような体躯が、佐奈の前方へと進み出るのを見て、シオンはやおら、はあ、とあからさまに肩を竦めた。

「失敬ですね、まったく。私は別に彼女を取って食おうというわけではありませんよ?」

やれやれ、とシオンが苦笑すると、少しだけ狼…煉の構えが緩む…が、やはり完全には解けない。
あくまで佐奈の前に立ちはだかろうとする狼の姿にひとしきり笑いながら、シオンは、さて、と椅子に深く腰掛けながら本題に入った。
それはつまり…今夜の一連の『事件』について…である。
佐奈にしてみれば、完全に売られた喧嘩…というより、言い掛かりではあるが、深夜の騒動という点を思えばそれだけでは済まないだろう、と身構えていた佐奈だったが、しかし。

「結果から言わせてもらえば、貴女にも煉にも、何のお咎めもありません。ですから気にしないように。まあセキュリティ無視で侵入してくれた誰かさんの後始末はちょっと面倒でしたがね」

ちろり、と流し目が向けられた先にはもちろん赤い狼がいたが、彼は完全無視を決め込んでいる。
佐奈はあわあわしつつ、しかしシオンの口から飛び出した予想外の言葉に目を丸くした。

「え…あの?」

驚く佐奈に、シオンのことは無視したはずの狼の赤い目が、気遣うように振り返る。
その様を眺めて、シオンはさっきとは異なる笑みを一つ浮かべ、しかしすぐに打ち消した。

「この研究所のセキュリティレベルの高さは貴女もご存知でしょう。中でも貴女の所属する部屋は所内のデータが入出力される需要な場所です」

なるほど、そうでなくとも厳しいセキュリティの中にあって、あの部屋は更に…というわけだ。
それは佐奈も…研究所に在籍する職員であれば誰もが周知の事実ではあるが。
/ 179ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp