第20章 新しい関係
でも自分は聞かなかったことにはできない。
して…やれない。
だから…と、気持ちを定めながら、煉は立ち止まり、身体ごと佐奈に向き直る。
人目の少ない廊下の隅…その壁越しに寄りながら、煉は佐奈の頭上の壁に手をついた。
「あの時の…佐奈の台詞」
「………」
瞬間、佐奈は、はっ、として、沈黙した。
彼の言いたいことが…佐奈は分かった。
でも…何て返したら良いか思いつかない。
思いつかなくて、そのまま黙ってしまったら。
煉の気配が、更に近づいて。
「俺の片想いじゃないんだったら、もう…遠慮しないから」
何だか…すごい(?)宣言をされた、気がした。
(なに?なに?今の……!?)
何かの聞き違い?なんて、佐奈はぐるぐるした。
あの山で、自分が口走ったことは覚えている。
そしてそれを煉もちゃんと聞いていて、覚えていたことも…ついさっきだが、理解した。
本当は…今の今まで、煉がそんな素振りも見せなかったから、あの山でのことは、何もなかったことにした方が良いのかもしれないと思っていた。
あの時の煉は大怪我をしていたし、意識だってきっと朦朧としていただろう。
そんな場面での自分の言葉なんて、彼の記憶には残ってないのかもしれないと、そう思っていたから……。
でも…そうじゃなかった。
それどころか、
「え…え、あ、あの、えんりょ…って……」
その発言は何だ!?とばかり、佐奈は目を剥く、が、目の前には自分を覗き込む煉の顔……。
そんな彼の頬も心なしか赤く見えたが、佐奈もくらくらしてしまいそうで、咄嗟に首を竦めた。