• テキストサイズ

擬人カレシ~真紅の狼・初めての生徒編~

第19章 夏の思い出-2


涙の溢れる佐奈の目尻を、煉がぺろり、と舐めた。

「ぁ…っ」
「くぅ…・ん?」

『大丈夫?』

そう言ってくれているようで、佐奈はその場で上体を起こし、ぺたりと座り込んだ。

「うん。大丈夫。煉こそ、痛かったよね。すぐに手当てしなきゃ」

でも…こうして生きててくれて良かった。
万感の思いで、佐奈は気持ちのまま…でも怪我に障らないように、そっと狼姿の煉を抱きしめる、と、一瞬、煉が迷うよう素振りを見せて、訝りながらも触れた掌に、佐奈はその理由を悟った。

「…………」

煉が怪我をしているのは分かっていた。
あんなに何度も弾き飛ばされていたのだ。
どうにか避けて、直撃は免れていたようだったが、それでも無傷なわけがない。
だから…彼の傷を予想はしていたけれど。

「血が……」

幾らか目が慣れてきたとはいえ、夜という暗さと、元々が真紅の毛で覆われているせいで、ぱっと見ではよく分からなかった。
でも触れてみれば掌が赤く染まるほど……。

「こんなに…血が……」

ここからみんなの元に戻って手当てをするまで、煉の体力が持つだろうか。
自分が彼を抱えて行けたら、あるいはそれが一番良いのだけれど……。
どうしたら煉にとって一番良いか、ぐるぐる考え始める佐奈の脳裏には、既に最前までの怪しい男のことなど欠片も残っていない。
いずれ落ち着けば、色々と疑問やら不審やらが溢れ出すに違いないが、今は…そんな余地など佐奈の中に存在しなかった。
そして…色々と目端の利く煉もまた、自らの重傷によって、常のようなわけにはいかなかった。

そんな二人からやや離れた場所……。
当の不審な男はふわり、と漂っていた宙から地面に降り立つと、一度は煉に託し、今は静かに地に横たわっている小さな角を拾い上げる。
きゅ、と握り締め、やがて広げた掌を、男はまじまじと見下ろした。
/ 179ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp