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擬人カレシ~真紅の狼・初めての生徒編~

第19章 夏の思い出-2


佐奈はその横を無視して通り抜けようとした、途端、

「無駄なことをするな」

激しく…ではないが、冷厳に言われて、佐奈は、かっとなった。

「無駄!?このままでいたら、煉がやられちゃう!」

だから例え無駄だろうと、煉だけを殺させたりするもんか。
だから邪魔をするなとばかり、思いきり険を込めて睨みつける佐奈に、男は、にぃ、と不思議に笑んだ。

「これは面白い。そなたと共にいた男は、そなたを置いて逃げて行ったというのに。あの狼は自らを盾にそなたを庇い、そなたもまた、無駄と知りながら、あの狼の元へ行こうという」

くくく、と喉奥で笑う様が、尚更佐奈の癇に障る。
しかも進路を邪魔する男を、いっそ蹴り飛ばしてやろうかという佐奈の物騒な思考を、男は知ってか知らずか、す…と、ある場所を指差した。

「あの社だ」
「え?」
「あの社に、邪妖は封じられていた。そしてその封印の証として、漆黒の角が社の扉の前に奉られている」

毎年の人間達の儀式と…そして角。
これが対となって、これまで邪妖を封じてきたのだと、男は言った。
だが、何処からかやってきた者達が、あろうことか社に祭られていた角を持ち出したのだという。

「あの角は本来、人間の目には見えぬもの。だが、そなたより先に現れた者らには見えたらしい。社に鎮座した角を珍しげに見ていたかと思うと、それを手に取りおった」

社に鎮座し、封印の助けとなっていたものが外れればどうなるか。

「結果はあの通りだ。奴らめ、何故か狐と兎に変化して倒れてしもうた」

そうして肝心の角は…と目を凝らせば、何故か煉が咥えていた。

「どうして…煉が……」
「私が授けたのだ。地に転がっていた角を、あの狼に託した。角による封印が解けたとはいえ、人間達が施した封印は強く邪妖を縛っている。ゆえに、どれほど荒れ狂おうと、奴が山を出ることはできぬ。今ならばまだ、あの角を奴に直接打ち込むことで、封印を戻すことが叶うのだ」
「それを…煉に……」

きっと、この男は煉に同じことを話したのだろう、と佐奈は直感した。
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