第19章 夏の思い出-2
まして、遊園地のお化け屋敷で半泣き状態だった佐奈を思えば、彼女は今、どんなに怖いことだろう。
(あのクソ男っ!)
性格分類はミステリアスとエレガント。
あまり表情を崩すことなく、親しい相手を除いては物腰柔らかで丁寧な言動を用いる。
そんな煉をして、心の中は今や毒々しさがあふれ出しそうになっていた。
(あいつが強引に佐奈を連れ出さなければ……)
佐奈にしても、どうしても嫌なら拒んで欲しかったところだが、みんながやる気満々だったあの雰囲気の中では、佐奈一人固持できなかったのは仕方なかったかもしれないが(佐奈以外にも渋っていた面々もいたのだが、煉にとって佐奈以外は眼中外である)。
とにかく追いついて、連れ戻さなければ。
その一心で走っていると、ほどなく人影が見えたが…しかし。
「え、あ、れ、煉くん?」
感じた気配…そうして視認に至ったそれは、佐奈ではなくて。
「あなたは……」
佐奈と一緒にいるはずの、タカヤ…だった。
どうして彼が一人でこんな場所にいるのか。
何かに怯えているらしい彼は、巡り合わせた煉を見て、明らかにほっとしたようだった。
「良かった…助かったよ…」
「助かった?」
一体何のこと…という疑問より先に、煉は瞬間的に目を吊り上げた。
「佐奈はどうしたんです?」
一緒だったはずだ。
なのに今、彼はたった一人で、社へ向かうのでなく、明らかに道を戻ろうとしている。
かたかたと、膝と言わず、全身を震わせている彼は何か怖い思いをしたらしい。
だが、一人とは……。
「答えてください」
低く…怒気を隠さない唸りを溢れんばかりにして煉はタカヤを再び問い質す、が、辛うじて彼の手が社のある方角を示すだけで、歯がかみ合わないかのように、かちかちと不快な音を立てる口からは、要領を得られるだけのものは何も出てこない。
タカヤとの出会い頭から数十秒、煉はこれ以上は無駄と即座に判断する。