第19章 夏の思い出-2
そうして引いたくじの、煉の相手は当然、既にタカヤとのペアが決められている佐奈ではなく。
煉的にいうと……。
(誰だっけ……?)
そんな希薄な認識しかない、既に怯え満点の兎の擬人化だった。
「よ、よよ、よろしく! あ、あの、頼りにしてるから~~~っ」
今にも兎化してしまうんじゃないかというほどに動揺&震えている割に、煉の姿を認めるや、いやーん、と甲高い声を上げて飛びついてきたのは雌の擬人化…だったが。
「……よろしくお願いします」
抑揚なく応じて、煉は彼女のタックル紛いをあっさりかわし、憐れ彼女は地面へとスライディング。
鬱陶しくもべそべそと蹲る兎は、煉には面倒で仕方なかったが。
(面倒だな…まったく……)
そう思いつつも、ペアがルールというならどうしようもない。
煉はとりあえず彼女を立たせてやりながら、やれやれ、と明後日を見た…その隙が、煉にはちょっとした不覚となった。
「ありがとー。うれしー!もう怖くてどうしようって思って……」
僅かな隙を突いて、彼女が今度こそ煉に抱きつく。
きゅー、と胴に縋りつく彼女は、擬人化とはいえ紛れもなく女性で、そこには柔らかな肢体が寄り添っている。
普通はここで喜ばない男はあまりいない…かもしれないところだったが。
「『怖さ』が肝試しの売りのようですからね」
それが嫌なら参加するな、とばかり(そこまでは音にはしないが)、煉は顔色一つ変えず…逆に面倒そうな色さえ浮かべて、ぺり、と、あたかも物を引き剥がすように彼女を遠ざけた。
「で、どうします?」
参加するのかしないのか。
言葉こそ丁寧に、しかしその胸中は面倒で仕方がなく。
敏感な兎はそれをしっかりと察したのか、おろおろと目を泳がせるばかりだ。
そうしている間にも、最初のペアが戻り、二組目…さらにその次へと順番が進んでいく。