第19章 夏の思い出-2
せっかくの夏の夜。
開催の可否については当初から賛否が分かれていたが、これはやらない手はないだろう。
既に他の教師仲間達は準備を始めている頃だ。
お誂え向きな夏山の夜、タカヤが支度にかかったそれは…夏のお約束……。
「肝試し!?」
夏の夜のお約束、とばかりな発案に、佐奈の声が裏返った。
自由参加だから…という割には、この奥にある古い社にあらかじめ置いてある蝋燭を取ってくるとか、簡単な(見るからにあまり役立ちそうにない)地図が手早く配られ、挙句。
「はい、一本引いて?」
「何これ?」
訝り、後退しかける佐奈をよそに、あれよあれよといつの間にかその場のほぼ全員がこの企画(?)に巻き込まれていく。
それでもペアを決めるらしいクジ引きを佐奈が躊躇っていると、
「じゃあ、代わりに」
なんて余計な真似をしでかしたのは何とタカヤだった。
「あ、俺とペアだね」
にっこり、と笑った途端、明らかに(?)ヤラセな空気を察しながら、煉も溜息を吐きながらクジに手を伸ばした、と。
「自由参加だから、無理しなくて大丈夫だよ?」
佐奈にはほとんど強制だったくせに、同じ口がそんなことを言う。
(こいつ、噛み付いてやろうか)
周囲はすっかり暗くなっていて、確かに肝試しにはお誂え向きだが、夜目の差でも、そこは擬人化にはお誂え向き…というより、色々と有利な環境だ。
だが、まあ、物騒な考えは考えとして、煉は色々と押さえ込みつつ、タカヤのそれに負けないくらいに、にっこり、と微笑み返した。
「いえ、せっかくの体験ですから。参加させてください」
それとも、俺は駄目ですか?なんて言葉まで継げば、
「そういうことなら、もちろん大歓迎だよ。駄目なわけないじゃないか」
あはははは、と明るく笑うタカヤの声は、煉の耳にはもはや胡散臭くしか聞こえない。