第18章 夏の思い出-1
「お疲れ様」
すぐにそんな風に言ってくれる煉は、以前と変わらないように見える。
「煉こそ、慣れない作業で疲れたでしょ。たくさんテント張ってたし」
だから煉こそお疲れ様、と佐奈が言うと、煉は…いつもなら嬉しそうにほころばせる面に、微かに苦笑を浮かべた。
「……そうだね」
動いている方が、少しは気分が楽だから。
煉がいつも以上に動き回っていたのは、ただそれだけ…だったが、それを佐奈に言えるわけもない。
何より、どうしても目で追ってしまう彼女の傍に、いつの間にか別の…人間の男が居座っていて、どうしようもない気持ちになった、なんて。
自分じゃない男の隣で、佐奈が笑っているのが、想像していた以上に苦しかった…なんて、そんなこと……。
だから。
「このカレーライス。家の方が美味しい」
本心とはやや違う、でもまあ、これも本音といえば違いない感想を煉がぽそりと嘯くと、佐奈は、それはどうも、と道化るようにしながら微かに笑った。
「みんなで作ったからね。それに家のより全然大きい鍋でだったし」
「カレー作りの中に佐奈いたけど、それでも味が変わっちゃうんだね」
そういう彼に、そりゃあ一人で作ったわけじゃなくて、みんなでだったりするから、色々と勝手が違ったり、味付けが変わったりしてしまっても仕方がない、という、それよりも。
「煉は飯盒の火加減見てたよね。上手く炊けてるみたいだね」
カレーはともかく、ご飯は成功したみたいだね、と笑顔を見せる佐奈に、煉は一瞬、スプーンを落としそうになった。
それでも寸でのところでそれを掴み直し、何でもない様子を作りながら、それでもそこに浮かぶかすかな驚きを、煉は上手く隠せなかった。
傍にいなくても、佐奈がどうしているかと、何となく見てしまう。
それと同じように、彼女もまた、自分を見ていてくれたのだろうか。