第18章 夏の思い出-1
佐奈はきっと…探しているのだ。
受け入れることはできないと…それをどう断ろうかと、考え、悩んでいる。
多分…という域を出ない予測だが、勘が、煉に告げる。
彼女は、上手く断る言葉を探しているのだと。
だからこそ、時間が必要なのだ…と。
(佐奈……)
やはり、告げるのは早すぎたろうか。
でも、もうこれ以上は無理だと思った。
好きな相手と二人で、何でもない素振りで一緒に暮らし続けるのは限界だったし、教師と生徒であることを理由に彼女がどうあっても拒絶するもりなら、いつ想いを告げたとしても、答えは変わりはしないだろう。
同じ家に暮らして、いっそ強引に手に入れてしまいたい衝動に駆られたことがないといったら、大嘘だ。
なのに『教師』と『生徒』……。
『人間』と『擬人化』……。
それが障壁になるというのなら、いっそ……。
そう思いつめて、でも、そうできない自分も、煉は分かっている。
好きだから、奪ってしまいたい。
でも…好きだから、できない……。
弱肉強食、力こそが全てだった、獣だったかつてに比べて、どうしてこんなに気持ちも、行動一つさえも複雑で、苦しいのか。
部屋に戻れば、同室の仲間達が、合宿に来てから覚えた枕投げに今夜も盛り上がっている。
煉は関わる気にもなれずに、不貞寝するかの如く、一人布団に潜り込む。
煉の放つ空気(オーラ?)を読まずに近づく擬人化は、その夜、一人もいなかった。