第18章 夏の思い出-1
「ちゃんと、話をしなきゃ……」
まだ気持ちも、頭の中もぐちゃぐちゃだけれど、この合宿が終わるまでにはちゃんと整理して、彼と会話できるようにしなければ……。
暗がりで一人蹲っていた佐奈は、いつまでそうしていても始まらないと立ち上がる、と、祭りの賑わいもいつしか消え、誰もいない浜辺には波の音ばかりが響いている。
ふるり、と海風に身体を震わせて、佐奈は浜に背を向けた、と、そこには、
「れ……」
いつまでも戻らない彼女を捜し歩いたらしい煉が、珍しく息を切らして立っていた。
「こんなところに一人でいるなんて、何をして……」
どうしようもない純粋な心配と、そして、苛立ちと、上手く制御できずに吐き出されかけた声に、佐奈がごめん、と素直に詫びれば、煉はバツが悪そうに目を伏せた。
「別に…謝らなくても、良いけど……。無事で、良かった」
「煉……」
そんな彼を見ていれば、早く宿に戻ろうと彼の手が促してくる。
佐奈は頷きながら、窺うように煉を見た。
「あ、あのね。家に戻ったら…その、ちゃんと話、するから。だから……」
だから…それまで待っていてほしい。
つまり、佐奈の意図はそういうことだと察した煉は刹那、眉を顰めた。
家に戻って話をするまで時間が欲しい、と彼女は言う。
だがそれは、どうしてだろう、と、煉にはうまく理解できない。
家に戻るまで…なんて、どうしてそれだけの時間が必要なのか。
自分は擬人化だから、人間の機微というものには、まだどうしても疎い部分もあるのは自覚しているが。
でも…人間としての感覚には鈍くたって、感じるものは煉にもある。
いきなり自分に告白されて(煉にすれば今更だが彼女にはいきなりに思えたことだろう)、ただひたすら驚いて混乱していて、だから落ち着く為の時間が欲しいというよりも、今の佐奈を支配しているのは、きっと、もっと別の……。
真面目で、ちょっと頭の固いところもある彼女だから、
『先生』という自分の立場について悩んだりもしそうだが…それよりも。
真っ先に感じたことに、煉は音にならない乾いた笑いを零した。