第18章 夏の思い出-1
「………っ」
もちろん追いかけることもできたが、今は逆効果な気がして、煉はその場に踏み留まる。
一方、逃げ出した佐奈は、祭りの片づけを終えたその場に座り込み、膝を抱えていた。
(分かってる。そんなの、分かってるよ)
彼の気持ちから、ずっと逃げ続けるなんてできっこない。
そんなことは分かっているし、しちゃいけないことだと知っている。
(それに……)
心の奥にある自分の本心に、佐奈はぎゅっ、と目を閉じた。
(怖い……)
彼が…というより、擬人化である彼の想いを受け入れるということが、怖かった。
そして、それでも…怖いと思いながらも消せない、自分の気持ちも……。
(私……)
いつの間にか育ってしまっていた、煉に言われるまで目を背けて気づかない振りをしていた…気持ちがある。
これは本当の恋愛とか、そういうものじゃない、一過性のものだ。
だから自分がしっかりしていれば大丈夫。
そう思う自分も、まだ何処かに…いて。
(違う、そうじゃない……)
膝を抱えて、佐奈は頭を振った。
思っていたんじゃない。
思おうとしていただけだ。
先生と生徒として、穏やかにやっていけるように願っている。
それは偽りない佐奈の本心だったが、だからいって、もうこのままでは、何もなかったように過ごすなんてできやしない。
自分も…煉も……。
それでも…これから先も、自分は先生で、彼は生徒であるならば、ちゃんと向き合わなければ……。
(避けてるばっかりじゃ、駄目だ)
家に帰ってもこのまま避けるつもりかと煉に言われた時、胸が痛かった。
彼の言うとおりだ。
これでは、どちらが生徒か分からない。